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「大阪しゃれ言葉」の連載にあたって
                経営活性化委員会委員長    二村 知子
 大阪独特のやわらかい言い回し、それでいて、主張は通さねばならない上方ならではの商売人の智慧としてよく使われていた「大阪しゃれ言葉」
 その冊子の企画を提案し、昨年十月から、毎日新聞の余録を書かれた方にお話を聞かせていただいたり、木津川計さんや、大阪ことばの研究をされている著名人に、お会いし、情報の収集をしてまいりました。
 そんな中で、大阪商工会議所の地域活性化の方から、大阪しゃれ言葉に詳しい和田哲株式会社の和田亮介会長をご紹介いただきました。上方の文化のひとつとして残っていた大阪のしゃれ言葉の本が、このまま無くなっていってしまうのは、寂しいと思う気持ちと、お客様の要望をかなえてさしあげるためにも伝承していけたらと、お話させていただく中で、そのことを、理解し、また共感して下さいました。
 大阪書店組合だよりと、大阪書店組合のホームページへの「大阪しゃれ言葉」の連載を、恐縮しながらも、お願いしたところ快諾して下さいました。
 今年は、国民読書年であり、読者からの要望のあった、「大阪しゃれ言葉」の冊子作りの一案として、そのしゃれ言葉の成り立ちなども含めこれから、和田亮介会長に執筆していただきますので、お楽しみに。
 

(執筆をお願いしました和田氏のご希望で縦書きで掲載しておりますが、IE以外のブラウザをお使いの方には横書きで表示されます。)


大阪しゃれことば その3 

 記録的な猛暑が続いた八月も、もうすぐ月替わりである。
 ここのところのテレビ報道、この猛暑に加えて民主党の党内争い、そして日本経済を直撃する円高問題で、時間が埋まる。

 一方、この猛暑と社会不安で、国民のアタマはすっかり疲れ、まさに〈八月の槍〉である。
 その心は、ぼんやり(←盆・槍)。

 といって、この世の中、そんなにボヤボヤしてはいられぬはず。本当は、今こそ真剣に日本の将来を〈冬の蛙〉でなければならないのだが……。
「冬の蛙?それ一体何でんねん」
「考える(←寒・蛙)や。国民の一人一人がもっと考えなあかんということや」
「それにしては、民主党の争い、チト変やおまへんか。なんで裁判受けんならん小沢はんがしゃしゃり出んならん。だれか止めたらええのに……」
「狼の睾丸(きんたま)やろな」
「何で、小沢はんが狼の……?」  
「怖くて触(さわ)れん」

 狼の睾丸が出たついでに申し上げるが、大阪のしゃれことばには、いわゆる下(しも)ネタが多い。

 代表的なのが、おいどである。そのいくつかは紹介済みだが、おいどはこの大阪ではごく当たり前の表現だ。しかし、他の地方の人達には、意外に通じない。半世紀もこの大阪に住んできた私には、オシリやケツなどより、はるかに親しみやすい。
「近頃不景気でんな。わての財布、ほんまに唐人のおいどや。」
 答えは、空っ尻(からっけつ)(←唐・おいど)。つまりは空財布。この私もご同様である。

 下(しも)ネタには、もっと凄いのもある。たとえば、嬶の褌(かかあのふんどし)、猿の睾丸など。これは次回に。
          


和田亮介